平成19年7月13日のインタビュー

西川氏: 最近どうですか?

おっさん: まぁ、ぼちぼちやな。

西川氏: なんだか忙しいみたいですね。

おっさん: 当たり前やんけ。 また新しいアル ゴリズムを発見したんや。 今その論文を完成させようとしてるとこや。

西川氏: 確か、5月にも新しいアルゴリズム を開発したとか言ってましたよね。

おっさん: あれはもう完成して、すでにジャー ナルに投稿してあるがな( この論文ね! ) 。 これはまた別のやつや。 これもまたスゴイんや。 今までど のアルゴリズムも通らなかったテストに全部パスしたんや。 これは世界初やぞ! わしは 今、世界の最先端におるんや! ガオー!

西川氏: (冗談なのか本気なのかさっぱりわ からんわ) へえー、それはスゴイですねー。

おっさん: まあ、どうせお前には 理解できんやろうから、あえて説明せんけども。 でも、これはかなりスゴイんや! ガオー!

西川氏: (あっ、また吠えた。 これオモロイ なあ) そうですか。 いや、でもひょっとしたら理解できるかもしれませし、それは是 非説明してくださいよ。

おっさん: いや、無理やって。

西川氏: いやいや、これは是非お願いします。 読者の方々も、たとえ理解できないとしても、おっさんは本当にアルゴリズム研究をやっ てるんだなあと実感できるじゃないですか。 これはいい機会ですよ。 みんな「おっさん ってスゴイんだな。カッコいいなあ!」と言って、おっさんに憧れるようになるかもしれ ませんし、女性だったら「なんだかわかんないけど、私、おっさんが好きになりそうだ わ。。。」な んてことになるかもしれませんよ。

おっさん: えっ、ほんま?

西川氏: (あっ、引っかかった!) 本当で すよ。 これでファンが増えることは間違いないですよ。 さあ、お願いします!

おっさん: よっしゃ! ほな、説明したろやな いかい。 わしはなあ、新しい Flux Function を開発したんや!

西川氏:  (始まったで。 さあ、どうなるの でしょうか)

おっさん:  基本的に、空気の流れを 調べるためには流体力学の方程式を解かなあかんが、これが難しすぎて人間には無理や。 だからコンピューターに解かせるんやけども、そのアルゴリズム(手順)は人間が考えて やらなあかん。 だいたいでいうと、まずは流れ場に細かく格子を張って、その格子点での圧力 などを計算するんや。 その計算方法というのはいろいろあって、世界の主流は有限体積 法という方法や。 それは、格子点の周りに小さな領域を作って、そこで方程式を満たす ように頑張ろうというやつや。 このとき、その小さな領域の境界で何がどれだけ出入り するかを計算するんや。 その出入りの量から考えて、その小さな領域内にある格子点の圧力とかエネルギーがどれだけ 増えたり減ったりするか計算するわけや。 ということで、このアルゴリズムの重要なと ころはその境界からの出入りをどれだけ正確に計算できるかにかかってくるわけや。

西川氏: はあ、なんとなくわかるような気が します。

おっさん: その境界の出入りのことを 流束(Flux)というが、これを数値的に計算するとき、これを 数値流束関数というんや。 つまり Flux Function や。 ほんで、これを計算する為の方法(解釈)の一つに Godunov Method というのがあって、それは境界の左右の2つの格子点だけを考えて、これを一本 の管の中での問題ととらえるんや。 つまり、境界が左右の2つの空気を仕切ってると考 えて、これを一本の管の中で左右2つの空気が膜で仕切られている状態とみなすわけや。 ほんで、この膜を破ったらどんな流れが できるかを考えて、それを基に数値流束を計算するんや。 この管の問題は Riemann Problem と呼ばれる有名な問題で、だからこの方法で数値流束を求めるとき、この数値流 束のことを Riemann Solver などと呼ぶんや。

西川氏: おお、すごいですねえ。

おっさん: 過去20数年、多くの Riemann Solver が開発されたが、その中でも Roe というおっさんが開発したものが有名で、今で も世界中で 使われてるが、これが実はときどき無茶苦茶な流れを出してしまうことが分かってきたんや。 そ のために、最近もまたいろんな Riemann Solver が開発されてるが、なかなかパリッとし たもんがない。 そんな中、わしが新たな Riemann Solver を開発したというわけや。

西川氏: へえ、すごいですねえ。

おっさん: わしは、Rotated Riemann Solver というアイデアをつかって、2つの Riemann Solver を組み合わせたんや。 しかも、た だ合わせただけではなく、うまく合わせれば、一つの Riemann Solver になることを 発見したんや。 つまり、2つあわせたからといって何もややこしくならないし、コスト もほぼ同じなんや。 しかも、こうすることによっていろんな問題をシステマチックに回 避できることを示したんや。 なんじゃかんじゃ修正をしてグチャグチャやる方法はいろ いろあるが、わしの Riemann Solver ではそんなグチャグチャは一切無しや。 何がどうなってるか、全て明確 に理解できる方法なんや。 これはほんまスゴイことなんや。 先々週からそれはそれはいろん なテストで試したが、全てパスしたんや。 これらのテストをすべてパスする 数値流束は この世にないんや。 わしのが世界初なんや。 わしは今、世界の最先端ギリギリに立って るんや。 ガオー!

西川氏: (あっ、また吠えた) へえ、スゴ イですねえ。

おっさん: ちなみに、その Roe というのはミ シガンの教授で、わしの師匠や。 ある意味、わしは師匠を超えたんや。 ガオー!

西川氏: えっ、その研究は師匠と共同でやっ てるんじゃないんですか?

おっさん: 違うがな。 わしは2003年にミシガン に戻って以来、ほとんど一人ぼっちで研究しとるんや。 わしほど孤独な研究者はおらん ぞ。 だから、5月に出した論文も一人の名前やし、今回のやつは交換留学生の男の子と の二人ぼっちの論文になるんや ( この論文よ! )。

西川氏: へえ、それはまたスゴイですね。

おっさん: スゴイのはこれからや。 まあ見と れ。 この数値流体力学の世界で一発かましてやるからな。

西川氏: (こんなおっさんがかませるわけないがな。 第一、そんな狭い世界でかまされても、 我々大衆にはわからんけども) そうですか。 それは是非頑張ってください。

おっさん: おう、ほな論文を完成させるさか いに、もう帰ってくれ。

西川氏: (相変わらず冷たい言い方するなあ)  はい、わかりました。 論文ができたら見せてください。 では、また10日後にお会いし ましょう!

おっさん: よっしゃー! これはほんまスゴイ からなー! それだけは、よう覚えとけよー! ほんまスゴイんやぞー! ガオー!

西川氏: (うーん、よくわからん)

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