西川氏: 最近どうですか? おっさん: まぁ、ぼちぼちやな。 西川氏: いやあ、ほんとに暑いですねえ。 おっさん: 暑いがな。 夏やねんから当たり前 やがな。 西川氏: それはそうですけども、ほんとに暑 いですよ。 おっさん: ほんとにって、嘘で暑いときなん かあるんか? 暑い日はいつでもほんまに暑いがな。 何をわけのわからんことを言うとん ねんな。 お前こそほんまにアホとちゃうか。 西川氏: (しょーもないことばっかり言うな あ、ほんま) いや、そんな細かいことはいいじゃないですか。 とにかく暑くて疲れま すねということですよ。 おっさん: それやったら最初からそう言うた らええがな。 ほんまにわけのわからんやっちゃで。 西川氏: (はいはい) えー、ところで、ま た最 近忙しそうにしてらっしゃいますね。 おっさん: 忙しいがな。 当たり前やんけ。 わしはいつでも忙しいんや。 ヒマがあったら何かで埋めたい男で有名やからな。 限られた人生 をヒマで終わらしたら、せっかく運んできてくれたコウノトリに申し訳が立たんがな。 西川氏: (コウノトリって、あんた) あー、 なるほど。 おっさん: 最近は小さな子供が命を落とす事 件が多いし、コウノトリもさぞかしやり切れん思いやろう。 せっかく頑張って運んでき たのに殺されたらやっとれんわな。 おっさん: (まじめに言うてんのかいな?) あのう、コウノトリって、まさか、 西川氏: えっ? お前、まさか、赤ちゃんはコ ウノトリが運んでくるってことを知らんのか? おっさん: えっ、いやいや、それは単なる欧 米の言い伝えであって、本当に運んでくるわけではないでしょう。 おっさん: あらー、アホやアホやと思てた けど、ここまでアホやとは思わんかったわ。 あらまあー、こんなこと言う人間に初め て会ったわ。 いやあ、珍しい人間やなあ。 ちょっとよく顔を見せてくれ。 ほおー、こ れがアホの顔なんや。 へえー。 西川氏: い やいや、それは間違ってますよ。 おっさん: うっわー、まだ分からんねや。 へえー、すっごーいなあ。 どれどれ、ほうー、これがアホの耳たぶか。 西川氏: ちょっと触らないでくださいよ! おっさん: やかましい! アホはアホらしく謙虚 に「アホですいません。こんなアホにも分かるように教えてください」とでも言ってみろ! 西川氏: (しゃーないなあ、言ってやるか) あ、はい。 じゃあ、アホですいません。こんなアホにも分かるように教えてください。 おっさん: しゃーないなあ、そこまで言われたら教えんわけにはいかんがな。 西川氏: (アホやー) おっさん: そもそもコウノトリというのは、 河野という名字の鳥のことでやなあ、近所では「河野さん!」とか「河やん!」 などと呼ばれてるんや。 ほんで、これが無類の赤ちゃん好きで、いろんなところへ出向 いては赤ちゃんを見つけてくるんや。 まあ、赤ちゃんマニアみたいなもんやな。 そやさか いに、家はいっつも赤ちゃんで一杯や。 何人もの赤ちゃんのオムツは換えなあかんわ、飯は食わさなあかん わ、風呂は入れなあかんわで、これでは嫁はんもたまったもんやないがな。 だ から毎日毎日、 「あんた、この赤ちゃん達どないすんの! ミルクもオムツもタダやないんや。 今月もまた 赤字やがな! 何とかしーや! このままやったら離婚もんやで!」と嫁はんにドヤされと るというわけや。 西川氏: (頭おかしいんちゃうか、このおっ さん) おっさん: そういう事情やさかいに、 河野はんも赤ちゃんをどっかに連れていかなしゃーない。 では誰のところへ連れていく べきかといえば、 それはやっぱりちゃんと結婚してるカップルのところがベストやろ。 まだ付き合ってる 段階のカップルのとこに連れていったら揉め事の原因になり得るし、ましてや独身の男の とこに連れて行ったら何されるかわからんがな。 ということで、ちゃんと結婚して それなりに愛し合ってる幸せそうなカップルのところで連れていくわけや。 ほんだら、 その二人も幸せやし、赤ちゃんも幸せやし、嫁はんも納得するから河野はんも幸せになる というわけやがな。 ほんで、どうせ連れて行くなら、背中に乗せるよりも、その長いくちばしにぶら下げたほ うがメルヘンチックでステキやろ。 ということで、赤ちゃんはコウノトリがクチバシに ぶら下げて連れてくるということになったわけや。 西川氏: へえー。 おっさん: なんやそれ。 屁がしたいならあっ ちでしてこいや。 とりあえず、これで分かったか? 西川氏: はっ、はいー。 おっさん: よっしゃ、わしは忙しいさかいに、 これで帰ってくれ。 河野はんに負けんぐらい、わしもメルヘンチックに頑張りたいんや。 さあ、帰った、帰った! 西川氏: (まあ、いいか) はい、分かりまし た。 今日はほんと勉強になりましたよ。 おっさん: そやろ。 もう二度と外でコウノト リは迷信やとかそんな訳のわからんことを言うなよ。 頭おかしいと思われるからな。 ほ な! 西川氏: (頭おかしいのは、あんたやがな) はーい! おっさん: いやあ、何かまたええことした気 分やな。 ルンルン!
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