平成19年9月3日のインタビュー

西川氏: 最近どうですか?

おっさん: まぁ、ぼちぼちやな。

西川氏: いやあ、探しましたよ。 引っ越すな ら引っ越すって言ってくださいよ。 アナーバー(ミシガン)のご自宅に行ったら、 部屋が空っぽになってるじゃないですか。 ほんと、びっくりしましたよ。 しかも、 近所の人に聞いたら、バージニアへ引っ越したって言うじゃないですか。 これまたびっ くりしてしまいましたよ。 一体何が起こってるんですか?

おっさん: うるさいやっちゃなあ。 これには いろんな事情があるんや。 まあ、入れ。 ゆっくり話したろやないかい。 さあ、どこから話したらええんや ろうか。 そうやなあ、4月のフランス滞在からかな。 フランスでワイン飲んでアヒルを 食べてたときに、突然ミシガンから「お前は7月末でクビや。 だってもう 金ないねんもん」という解雇メールが来たんや。 しょせんは任期付きのポジションやさ かいに、こんな日が来ることは分かってたけども、しかし こんな突然な通告は殺生やで、ほんま。 とにかく、こうして3ヶ月後の解雇に向かって カウントダウンは始まったわけや。 で、なんじゃかんじゃあって、バージニアで仕事が 見つかって引っ越してきたというわけや。

西川氏: 省略し過ぎですよ! どうやっ て仕事を見つけたのか、ちゃん と説明してくださいよ!

おっさん: ええやんけ、そんなん。 もう忘れ たわ。 とにかく、わしはハッピーになったというわけや。 それでええやんけ。

西川氏: (まあ、ええけども) はあ。 で、今度はどんな仕事なんで すか?

おっさん: 幸い似たような仕事や。 数値流体 力学のアルゴリズム研究や。 今度は NASA の仕事やから、もうちょっと実用的なことをや ることになるけども、自分の研究も進めるつもりやし、なかなか素晴らしい環境や。 わ しはハッピーや。

西川氏: そうなんですか。 NASAで働くんです か?

おっさん: おう、NASAのラングレー研究所というと ころや。 でも、わしはアメリカ人ではないからNIA(National Institute of Aerospace) というところに所属してるんや。 ちょっとややこしいから、わしもようわからん。 もうこ れ以上聞かんといてくれ。 確かなのは、NASAの数値流体力学プログラム(ハンスリーデー) の開発チームの 一員になるということや。

西川氏: (まあ、だいたいわかるけど) へえ、良かったですね。

おっさん: まあな。 ただ、ある意味、これで また、違う人生を歩むチャンスを逸したんやけどな。

西川氏: どういう意味ですか?

おっさん: 数値流体力学関連の仕事がなかったら、 別の道に進むしかないってことやがな。 ポスドクやってると研究費が無くなってクビに なることは茶飯事や。 クビになったら、新しいことを始めるチャンスや。

西川氏: はあ。 なんだか変な話ですねえ。 クビがチャンスですか?

おっさん: そうやがな。 誰でも何かあるやろ う。 こういうことがやりたいとか、何か夢というか、目標みたいなんが。 いつか独立して社長になりたいとか、ラーメン屋を開きたいとか、ニューヨークへ行って ダンサブルになりたいとか。 でも、なかなか出来へんねや、これが。 なぜなら、仕事が あるからや。 その安定した(又は慣れきった)生活を捨てきれないんや。 ましてや、 嫁はん子供がおって、しかもマイホームのローンを抱えた状態で仕事をやめるのは 困難やろう。 そんなときはクビになることや。 そして転職先も見つからないことや。 そうしたら、もう他のことをやって生きていくしかないがな。 となれば、思い切って ニューヨークへ飛べるがな、会社を立ち上げられるがな、ラーメン屋を開けるがな。 基本的に人間はやらんでもええ ことはやらんから、やりたいことがあってもその必要がなければやらんもんや。 で、そ のやりたいことをやらなあかんようにする方法の一つがクビになって路頭に迷うことや。 そうなったら、やらなしゃーないんやから。 心置きなく思いっきりやりたいことを試せ るというわけや。 クビになって路頭に迷うことは、夢の実現への大きなチャンス になるんや!

西川氏: はあ〜、まあそれはそうですけども、

おっさん: わしの場合も、 日本へ帰って全く新しいタイプの笑える大学を設立するとか、勉強のできる定食屋を開くとか、 「青春の高校数学」の全国ツアーを開催するとか、おっさん楽曲のストリートパホーマン スで小金を稼ぐとか、それはもういっぱいやりたいことがあるんや。 しかしやなあ、 これがなかなか難しいんや。 とりあえず、体は一つしかないわけやから全部はでけん。 じゃあ本業をやめるかというと、それもまたやりたいことの一つだけに捨て難い。 特に 最近はわし独自のアルゴリズムの開発に成功しつつあるだけに、今はやめるわけにはい かん。 ほんま、やりたいことを全部やるのは難しいんや。

西川氏: うーん、なるほど。 だから、本業をクビになっ て、転職先も見つからない場合は、その分野を去らなければならないと。 そうなれば どうしようもないので、何の躊躇もなく 他のやりたいことを始めることができるというわけですね。

おっさん: そうやがな。 今回はかなりいいチャ ンスやったんや。 なんせ3ヶ月しかなかったんやから。 そんなんでまともな仕事が見つ かるかいなと思ったら、NASAが出てきてコンニチワや。 ほんま世の中何が起こるかわからん。 まあ、 結局は7月の終わりに間に合わず、8月1日から最近まで失業中やったんやけどもな。 でもそれもまたええ経験や。 嫁はん子供を抱えて失業するなんて、なかなか経験でけんこと や。

西川氏: (誰も経験したくないけど) でも奥さんは大変ですよね。

おっさん: いや、そうでもないで。 結婚して からずーっとこんな綱渡り人生が続いとるさかいに、最近では「もう麻痺してきたわ」とか言うて 笑っとるわ。

西川氏: そんなもんなんですかねえ。

おっさん: そんなもんらしいで。

西川氏: そうですか。 じゃあ今回の仕事も任 期付きですか?

おっさん: 当たり前やがな。 っていうか、何 年任期なのかもよく知らんまま来たわ。 そんなんどうでもええし。 まあ、5年ぐらいは金 があると言ってたけども、それも当てにはならんやろ。 とにかくかまし続けるだけよ。 今度はポスドクではなく、ちょっと 出世してResearch Scientistとなったけども、結局はポスドクみたいなもんや。 まだま だ綱渡り人生は続くで。 わしはもうこのスリルが無いと生きていけんようになってしも たわ。 人生は綱渡りしてなんぼや。 生き延びるためにかまし続けることや。 それがオッ サンってなもんやがな。

西川氏: そうですね。 それでこそおっさんで すよ。 とりあえず、私も近いうちにバージニアに引越してきますよ。 また今後とも宜し くお願いします。

おっさん: おう、こっちゃこそ。 これからも しっかりインタブーしてくれ。 ほな、またな!

西川氏: はい、それでは!

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