西川氏 最近どうですか？
おっさん まぁ、ぼちぼちやな。
西川氏 あらっ？ まだ居るじゃないですか。 ベルギーに行くんじゃなかったんですか？
おっさん 行くがな。今からやがな。 もう空港に向かうところやさかい、帰ってくれ。
西川氏 それじゃあ、私が 空港までお送りしますよ。その道中にインタビューさせて頂きますから。
おっさん ええ〜、なんか嫌やなあ〜。
西川氏 （なんでやねん？） ガソリン代を 請求したりしませんから。完全無料で空港までお送りしますから。
おっさん ほんま？ それやったら頼むわ！
西川氏 （分かりやすいなあ） それじゃあどうぞ、車に 乗ってくださいよ。
おっさん おおきに、おおきに。助かるわぁ〜。
西川氏 トランクに入れる荷物は無いですか？
おっさん ないない。 一週間だけの滞在やし、別に遊びに行くわけやないし、こんなもんや。 ほな、行こ行こ。
西川氏 はいはい。それでは参りましょう。
おっさん はいはーい！
西川氏 忘れ物はないですかー？
おっさん って、もう車は動いてるがな！ 忘れ物があったらどうするつもりやねん。
西川氏 どうせ無いでしょうから、いいんですよ。 ところで、今お母さんがアナーバーを訪れているらしいですね。
おっさん おう、そうやで。 子供らも大喜びやし、わしらも人手が増えて助かってるわ。
西川氏 おっさんがアナーバーに来てもう １０年以上ですから、お母さんも何回か来られてるんでしょうね。
おっさん ２、３回は来てるなあ。 だいたいが嫁はん子供の同伴や。子供連れて飛行機ってのは大変やから、助けてもうてるってことや。 一回だけ、わしが卒業したときに来たときは旅行もしたけど、それ以外は アナーバーでゆっくりってなもんやな。日本では何かと忙しい毎日やからなあ、 この何もないアナーバーでゆっくりしてもらうというこっちゃ。
西川氏 なるほど。お父さんの方はどうなんですか？
おっさん 一回だけ来たで。その、わしが 卒業したときに。皆で旅行に行ったりしたけど、どうも外国は合わんようや。 何よりも飯がアカン。どこのレストランに行ってもアカンかったわ。 挙句の果てに、「カレーライス食べたいわ〜」とか言うてたわ。
西川氏 そうでしょうねえ。 食べものは違いますよね。特に、おっさんのところは魚介類大好き家族ですからね。 これはミシガンではダメですよね。
おっさん よう知ってるがな。 その通りや。うちは確かに魚ばっかりやった。 日曜日の朝は早起きして、魚市へ行ってなんじゃかんじゃ買ってくるんや。 ほんで、必ずウナギの肝を食ってたなあ。懐かしい話や。 朝も魚なら、弁当も魚で、晩飯も魚や。ほとんど 魚だけで育ったみたいなもんや。 ぶっちゃけた話、魚が主食やったわけや。はっはっは！
西川氏 （ぶっちゃけようが、ぶっちゃけまいが、 それは違うと思うけど） そうですか。じゃあ、やっぱあれですか、おっさんはお米派ですか？
おっさん オコメハ？
西川氏 （わかってくれよ。 海外長いとこうなるのか？） だからその〜、パンよりもお米の方がお好きなのかなと 思いまして。
おっさん な〜んや、それやったら最初から そう言うたらええがな。「オコメハ」みたいな訳の分からんことを言うなよ。 人をカメハメハ大魔王みたいに言いやがって、ほんまー。
西川氏 （それを言うなら 「カメハメハ大王」やろ。大魔王って、あんた、、、） はぁ〜、すいませんでしたぁ〜。
おっさん ほんで何や、ええ、 パンと米とどっちが好きてか？ 米に決まってるやんけ。あったりまえやがな。 ドカベン山田太郎のお父ちゃんが言うてたやろ、 「一粒の米の中には七人の神様がいる。 だから一粒でものこしたらバチがあたる」って。 これほどまでに有難い食べ物が他にあるか？ そんなもん、世界中どこ探してもあるかいな。 ごはん一膳でだいたい米粒が２０００粒ぐらいやろ。だから、 一膳で１４０００人の神様が体内に入っていくわけや、しかもこれを 朝昼晩の３回食べるわけやから一日で４２０００人の神様や。 ほんで、これを毎日繰り返して３０年生きててみい、 全部でなんぼや？ ４２０００×３６５×３０＝４億５９９０万人の 神様がわしの体内にいらっしゃるわけや。 どや？ その有難さは想像を絶するやろ。 腹に向かって拝みたくなるわ、ほんま。
西川氏 （神様は体内に残っていくんや。 へえ〜） なるほど、確かに有難いですね。だからパンよりも米の方が好きだということですか。
おっさん アホか。それだけちゃうぞ。 他にも理由はある。米というのはほんまに手がかかる。田植え、稲刈り、脱穀、 もみすり、精米。その一つ一つの作業は大変なもんや。この広い世界に、ここまで手のかかる 食べ物が他にあるか？ いや、ない！
西川氏 でも、そういうことなら パンだって小麦粉から、
おっさん アホか。パンは買ってきたらええ だけやがな。
西川氏 ええ？ それを言うなら 米だって、
おっさん アホか。米は買ってそのまま パクッというわけにはいかんやろ！ パンは買って袋開けたらパクッで終わりやがな！
西川氏 （ああ〜、なるほど、そういうイメージか） はあ〜。
おっさん さらに、米という字を見てみろ。 これは分解すれば八十八となる。算用数字で書けば８８や。 つまり、パチパチや！ それはもう拍手するしかないということやがな！ ここまで 祝福されてる食べ物が 他にあるものか！
西川氏 （これは初めて聞いたわ。 「米を作るには８８の苦労がある」は聞いたことあるけど。。。） なるほどねえ。 だから米が好きなんですね。（結局、まともな理由がなかったけど、でももうええわ） さあ、空港ですよ。
おっさん おっ、そうかそうか。
西川氏 え〜、ここがDepartureですね。 ここでいいですか？
おっさん おお、ここで降りるさかいに。 お前はこのまま帰ったらええがな。 おおきに、おおきに。ほな、またな。
西川氏 それじゃあ。いってらっしゃーい。
おっさん はいよー！ ほななー！
西川氏 ベルギーにはお米はないと思いますけどー、 頑張ってきてくださーい！ それじゃあー！
おっさん えっ？
西川氏 あらっ？ なんか今、不安な表情やったなあ。 ベルギー人も米を主食にしてると思ってたんかなあ。あのおっさんなら有り得るけど。
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